こんな記事がtwitterで流れてきて、おいおい…と思ったので、
このブログで分析をしてみようかと思います。
あのさ、裏口入学って書いちゃうのはどうなのよ。高専から東大に編入すんのなんてめっちゃ大変だぞ。ていうか、有名大に比較的簡単に入れたのは10年くらい前の話であって、今は科目は少なかれど枠が狭いからむしろ普通に受けるより大変なくらいだよ。適当なことを書くな。 https://t.co/NFYc5jsJdO
— あけまつしんじ (@minami106) 2018年3月27日
見出し
「裏口入学」!?
まずもって、編入学を「裏口入学」って書くのやめましょうよ…
編入学は「れっきとした公式ルート」です。
高専から大学に入ろうと思ったら、編入学しかルートはありません
(厳密には三年時修了→一般受験という道もありますが、あんまり一般的ではありません)。
あたかもズルして入るみたいな書き方するのはちょっと如何なものか。
この記事に書かれていること
この記事に書かれていることをおおまかにまとめてみます。
- 高専から大学への「編入学」というルートがある。
- 試験科目が少なくて編入学は簡単。科目は数学、英語、物理。数学と物理は高専生の得意分野だから入試が一般入試とくらべてかなり楽。編入生の間では「冗談で」裏口入学と言われてる。
- 高専は進学校化してきている。学生の企業からの評価も高い。
- そのぶん留年しやすい。
みたいな感じです。まぁなんというか、よく言われてるようなことだとは思うんだけど…
「編入学は楽に有名大学に入れる」の落とし穴
僕が高専に入ったときなんかは、よく言われてました。
「編入学は楽に有名大学にいけて楽だよ。センター試験受けなくて良いし」。
確かに、編入試験はセンター試験とは無縁ですし、科目も少ない傾向があります。
で、7年とか8年前は、編入試験の受け入れ枠って有名大でもけっこう広くて、
けっこうサクサクと有名大に進学していく高専生が多かったのも事実です。
た、だ。
これ、あくまで7、8年前の話です。
今起きている話はというと、まず、高専からの大学編入の受け入れ枠は
有名大から順にじわじわじわじわ、狭くなってきています。
「楽に入れる」なんて状況じゃないですよ。
クラスの上位5番以内みたいな学生が、必死こいて寝る間も惜しんで
短くても半年くらい勉強漬けの日々を(しかも学校の通常のタスクもこなしながら)過ごして、
それでも合格率で言えば50%届くか届かないかみたいなのはザラです。
これ、「楽」か? ていうか、ここまでして合格して「裏口入学」って書かれなきゃならんか??
多分この記事にかかれている「編入事情」は、
一昔前の常識が前提となっています。
まぁ、そりゃそうだとは思います。この記事でインタビューしたのであろう学生って
「東京大学工学部出身の男性」なんで、
少なくとも編入試験受けたのは5年以上前なんでしょう(わからんけど)。
もう、事情は変わってます。「編入で楽に有名国立大へ」なんて、
正直今は口が裂けても言えないです。
東大の編入試験
しかも、東大の編入試験はあたかも「学校でやったことが前提になってるから楽ですよ〜」
なんてノリでこの記事は書かれていますが、これもぶっちゃけ大嘘です。
まず、東大の編入試験の問題、学校の授業受けてるだけじゃ100%、手も足も出ません。
数学も物理も例外なくです。学校の授業受けてるから得意分野でしょー!
なんて、どの口が言っているのだって話です。
なんなら、学校の授業関係なく、0からがっつり理論的なところを勉強し直すくらいのノリで
挑まないと、まず無理でしょう。英語はそもそも高専生は超弱いので、ここでもすげー苦労することになります。
これでいて「(東大は)2年次編入」。
そしてですよ。これだけ「大変」な試験くぐり抜けて、
合格したら東大の「2年生」になります。
これ、何がおかしいかわかりますかね?
本当は「3年生」のはずなんですよ。
でも、東大の場合は取得単位数とか授業難易度の関係で「2年」に入る約束なんです。
すなわち、こんだけ頑張って、強制的に1年留年扱いになってようやく入学。
人によっては2年次編入のほうがじっくり勉強できるからいいって人もいるけどさぁ…
ただ、これ、コスパがいいとは、正直言えないよなぁ?
※東大を含むいくつかの大学では、「2年次編入」という約束があることがある。ということです。東大のような一部の大学を除く一般的な大学編入では、基本的には「3年次」に編入するのがふつうです。
編入試験のメリットとデメリット
そもそも、編入試験のメリット、デメリットってなんだろね?
って考えた時に、以下のようなことが挙げられると思います。
編入試験のメリット
- 科目が少ない傾向がある。英語なんかはTOEICで置き換えられることが多い。
- 日程が被らなければいっぱい受けられる。
- センター試験ない。
編入試験のデメリット
- 有名国立大あたりは、最近は枠がせまい。
- 東大のように2年次編入となる場合がある。
- 入って馴染むの結構大変。
- 「浪人」が許されない空気が強い。
- 予備校とかない。
これに対して、一般入試のメリットとデメリットってのはほぼ逆になるのではないかと。
特に、「編入は浪人が許されない空気が強い」というのは、意外と語られていないことだと
思います。基本的に編入で浪人する学生ってほぼいません。予備校もないし。
一般入試はさ、浪人ってあるじゃない。しかも東大とくりゃ尚更。
科目は多いしセンターも受けなきゃならないけど、枠はある程度毎年担保されているし、
浪人だって、まぁ仕方ないくらいの空気があるじゃないですか。
一昔前は「けっこうガンガン合格してた」から、
今言ったようなデメリットは問題にならなかったかもしれませんが、
「そもそも合格するかどうかわからん」ってなったとき、
このデメリット群を無視できるか。出来ないと思いますよ。リスク結構高いもん。
これもやっぱり、一概に「編入は楽」なんて言えない気がします。
高専から進学する人が多い!って、それは専攻科か技科大に行ってる人が多いだけ
高専からの進学が多いんです!なんて情報も書かれていますが、
比較的容易に進学できる専攻科、技科大に合格している人を考慮すれば、
そりゃ進学率はある程度高くなるだろとは思います。
有名国立大への進学実績について計りたいなら、「内訳」をちゃんと見ないと。
高専絡みの「誤解に満ちた」情報に注意
高専絡みは、高専受験にせよ高専の中の話にせよ、大学編入試験にせよ、
とにかくみんなよくわかってないので、「誤解に満ちた情報」が流布されがちです。
高専受験に関してはずーっと前からそうなんだけど、最近編入でもこういうのは多い。
こういうミスリーディングを真に受けてしまった例えば学生や親御さんが、
専攻科進学をやめて「有名国立編入一本で行けんじゃん!」なんて思っちゃったら
どーすんだろね?(ちなみに、今は専攻科→大学院についてはかなり行きやすい流れになってます)
編入試験もそうだけど、進学事情なんて刻一刻と変わります。
「一昔前は真実だったこと」も、今となっては全然そうじゃない。
皆さんどうか、発信する側も受け取る側も、ほんと気をつけて下さいね。
合同会社Haikara City CEO / 高専入試と高専のための学習塾ナレッジスター創業者 / スキルアップAI 講師 /高専映像塾ナレッジスター CEO / 社会人研修講師(数学/プログラミング/人工知能)