大学編入向けの対策授業をしているとき思ったことがあったので、
せっかくなので記事にして残しておくことにしました。

定数係数非斉次線形二階微分方程式

という形で表せるような微分方程式を、定数係数非斉次線形二階微分方程式と呼びます。
大学編入試験では、微分方程式を出題する学校が比較的多くて、
この形の微分方程式の解法は、大学編入をするのなら必ず抑えておくべき内容。

この形の微分方程式は、以下のような手順で一般解を求めます。

  1. 左辺=0と置いて、一般解を求める(斉次方程式を解く)。
  2. 次に、もとの方程式(非斉次方程式)のひとつの特解を「解の推定」などの方法で求める。
  3. 非斉次方程式の一般解は
    x=(斉次方程式の一般解)+(非斉次方程式の1つの特解)
    という形で求められる。

「解の推定」

例えば、以下のような微分方程式を考えます。

まず、=0と置いた斉次方程式の一般解は、基本解の線形結合で表せるので、特性方程式

を解いて、λ=2,3。 これより、基本解は

となり、この線形結合

が斉次方程式の一般解となります。

そして次に、非斉次方程式

のひとつの特解を求めます。右辺の形からひとつの特解は

と書けるであろうと推定し、これを
左辺に代入→両辺の係数比較を行います。

右辺と係数比較をするとA=2が得られて、非斉次方程式のひとつの特解

が得られます。

あとは、 x=(斉次方程式の一般解)+(非斉次方程式の1つの特解)
という形で非斉次方程式の一般解も判明するというが一連の流れです。

ということで、一般解は

だということが分かりました。

ところが…

それじゃあ、例えば先程の微分方程式の右辺をちょっと変えて

も同じように解けそうだなと思うのは当然の発想です。
ところが、教科書(高専の教科書でもそう)あたりを読んでいると、
なぜかなぜか、以下のようなことが突然書かれていることが多いのです。

e^2t は斉次方程式の一般解に含まれているので、
この場合は x=Ate^2t と解を推定する。

これはなぜ!? という質問をよく受けます。

大学編入の対策授業をしていると、
「何でこの場合だけ、推定の形を変えなきゃって思うんですか?」
「斉次方程式の一般解に含まれる、の意味がわかりません!!」

という質問を非常によく受けます。

これ、理由は簡単なんです。普通の推定だとうまくいかないんですよ。

実際にやってみればわかります。我々が「普通に」思いつくように
x=Ae^2t と解を推定し、実際にこれを左辺に代入してみると、

と、各項がキャンセルして0になってしまい、
そもそも係数比較を行うどころではない状態に到達してしまうのです。
だから、とりあえずtを1回かけた形って推定をしなおしてみるか…
っていう、いわば試行錯誤のプロセスが、「本当は」あるのです。

でね、「そもそも左辺がどうしてキャンセルしてしまったんだろう?」
と冷静になって考えてみると、
「あぁ、推定の形が斉次方程式の一般解に含まれる形になっているからだ」
って初めて納得できるわけね。こういう流れでようやくめでたしめでたし。

教科書には「試行錯誤」が載らない

これって、「やってみて失敗したから違う方法を採用した」って流れが分かれば、
あー、なるほどそういうことなのねって納得ができるじゃないですか。
つまり、「一回ふつーにやってみりゃ理由はすぐわかる」ことなんですが、
意外にも、突然「この場合は x=Ate^2t ね」と言われて
フリーズしてしまう学生は多いようです。

で、思ったのは、
「あー、教科書って”試行錯誤”が全部省略されるからなぁ」ということ。

問題を解くのに、「試行錯誤」はつきもの。

問題解くときって、本来「あーでもないこーでもない」を繰り返すはずなんですよ。
で、何度か色々やってみた結果、「あっ、この方法はうまく行きそうだな!!」
という方法にいずれたどり着き、正しい解法がようやく手に入る…

ってのが、当たり前の流れだと思うのです。
問題を解くときに「試行錯誤」「紆余曲折」ってのは、「つきもの」のようなもの。

ところが、教科書ってそのプロセス、載せないんですよね。
(教科書のみならず、入試問題の解説なんかもそう)
だから、あまり何も考えずに読んでしまうと、
あたかもそれが「突然思いついて当たり前」かのように見えてしまう。

しかし、本当はそうではないのです。
教科書や模範解答を書いた人だって、最初は試行錯誤するんですよ。
で、そのプロセスをすっ飛ばして教科書や模範解答を書くんです。

さっきの解の推定の話だってそうね。
最初は誰だって x=Ae^2t って普通に推定をしちゃうのよ。
で、「あれ?おかしいな?」ってなって、初めて正しい推定の形が見えてくる。
この「プロセス」が教科書の文章の後ろには隠れている!!
ということを忘れてはならぬのです。

この事実を「意識」するだけでも、色々違うはず

ここからひとつ、教訓が見えてきます。

教科書や模範解答の文章の裏には「試行錯誤」があって然るべき!!

これを意識して教科書や模範解答に挑むだけで、色々と気が楽になるような気がするのです。

例えば、高専の過去問解説だって、市販のものは
「そんなこと、いきなり言われましても…」みたいな解答がたくさん書かれています。
何も考えずに読むと「こんなの思いつかないよ…」と心が折れてしまうかもしれませんが、
「この人も試行錯誤の上でこの解法を思いついたはずなんだ!!」
という気持ちで読むことが出来れば、「自分には思いつかない」と絶望せずに済みます。

おかげさまで、このサイトのキラーコンテンツになった
「高専入試過去問解説 平成27年度分」のコラムでも、
次のようなことを語りました。
他の人が書いた文章を読む上で、本当に大切なことだと思います。

コラム「本番で思いつく気がしない!?」

「難しい問題の解説」をしたあとに,学生さんからよくこう言われる.
「理解はできるが,本番でヒント無しでこの答えを思いつける気がしない!!」
… 本当に気持ちがよくわかる.というのも,僕もそう思うからだ.

 「模範解答」というのは,ものすごく洗練されている.「模範」という言葉が表してい
るとおり,その解答はいわば「もっとも美しい」「もっとも理想的な」解答だ.しかし,
ここで気をつけてほしいのは,模範解答を書いた人だって,一発で模範解答なんて思いつ
かない!ということだ.事実,この資料だって,僕は何度も頭を悩ませながら,
何度も解答を修正し,書き直している.

 結局,教科書や参考書に載っている「模範解答」では,必ず「試行錯誤のプロセス」が
省略されているのである.しかしながら,問題の難易度が上がれば上がるほど,それを解
くためには試行錯誤が当然必要であり,トライアンドエラー (try and error) の結果,
やっとのことで答えを得られるものなのだ.

 皆さんにもどうか,模範解答をすぐに思いつくことなんてあり得ないということを念
頭に置きつつ,「こうかな?」「いや,こうじゃないな」「じゃあこうかな?」「うーん,やっぱりこうかな」「あ,これでうまくいくかな?」「お,いけるかもしれない!」という,幾度とない軌道修正を遠慮せずに繰り広げてほしい.

現実世界に現れるいろいろな問題だって,解決するときはそうやって解決するものだ.

ー 「高専過去問解説H27数学」コラムより

この記事を読んだ人がひとりでも、
「なんだ、心を折ってしまう必要なんてないんだ」
ということを感じてくれれば、大変幸せに思います。

特にいま、このWEBサイトに高専過去問解説を見に来る学生さん多いから、
君たちにメッセージ。市販の過去問解説読んで分からないところなんて、あって当然!!
(だからうちの過去問解説を徹底活用しなさい!!笑)