【連載第7段はこちら!!】

滞在最終日

友人「なんかさ」
僕「ん?」
友人「意外と充実してんな,この旅…」
僕「そうだな…」

羽田空港の掲示板に映しだされた「欠航」の文字を見たあの日が
随分前のことに感じます.

FullSizeRender 101

そのくらい,この離島滞在は何だか,
初日の救いようもないテンションからは想像もつかないくらいに
妙な充実感を帯びたものだった気がします.

いよいよ,最終日

朝食

朝食は,昨日定休日でフラれてしまった「おともだち」という定食屋さんへ.
この定食屋さんは, 元町港周辺でもっとも早い時間から開店していて,
伊豆大島名物の朝ごはんが楽しめます. 僕は朝からべっこう丼を堪能.うまい.

べっこう丼は店によって全然味が違う.ここもまた,美味しいべっこう丼だった.

べっこう丼は店によって全然味が違う.ここもまた,美味しいべっこう丼だった.

友人は「べっこう刺身定食」を注文していましたが,
刺身つける醤油には, わさびではなく島とうがらしのかけらが入っていました.
なんでも,伊豆大島ではわさびの代わりに唐辛子のかけらを醤油に入れて楽しむのだとか.

波浮港

伊豆大島滞在の最終日…
なんせ伊豆大島は1時間ちょっとあれば1周できてしまう広さであるのに加えて,
2日目で何せ伊豆大島を味わい尽くしてしまう勢いで過ごしてしまったので,
我々は「一体最終日は何をして過ごせばいいのか」という不安を抱えていました.

とりあえず, 朝食を終えた我々はゲストハウスKOIZUMIに戻り,
チェックアウトの準備. そして, 別れ際にマスターに
「最終日の過ごし方」の助言を仰ぐことに.

友人「マスター, 3日間お世話になりました」
マスター「どうだった? 楽しかった?」
僕「えぇ,とても. 昨日は月と砂漠ラインってとこにも行ってきましたし」
マスター「あぁ,月と砂漠ラインね.あそこは良いよね

友人「今日どこいくかまだ決めてないんですよ」
マスター「波浮港(はぶみなと)は?」
僕「波浮港昨日展望台みたいなところから見ましたよ」

展望台から見た波浮港

展望台から見た波浮港

マスター「波浮港はね, 降りてみたほうがいいよ.あの風情のある町並みはなかなかだよ」
友人と僕「へぇー」
マスター「あと, 波浮港には島京梵天っていうたいやき屋さんがあってね,
ここは全国的にもすごく有名だよ.」
友人と僕「へぇー」

波浮港の風情のある町並みを堪能しながら,
島京梵天でたい焼きを堪能…なるほど,悪くない.

さらに, 僕は事前に調べたネットの情報で, 波浮港には揚げたてのコロッケを楽しめる
お店があるということを知っていました.

僕「あ,そういえば波浮港にはコロッケ屋さんあるみたいですね」
マスター「あぁ,コロッケ屋さんね」
友人「コロッケいいですね」
マスター「まぁあのね…」
僕「?」
マスター「あの港町の雰囲気の中で食べるから美味しく感じるかもしれないけど, 普通のコロッケだよ」

マスターの助言を胸にしまった我々は, マスターにお礼を言って
ゲストハウスKOIZUMIを後に. なんというか,素敵な宿だった.

チェックアウト後の車内

ゲストハウスKOIZUMIを後にした我々は, レンタカーで伊豆大島に繰り出しました.

友人「2つ気になることがあんだよ
僕「?」
友人「マスターに月と砂漠ラインの話しただろ」
僕「うん」
友人「“ああ,月と砂漠ラインね,あそこはいいよね”って言ってたよな」
僕「言ってたね」
友人「有名なんじゃないのか」
僕「あぁ...」
友人「昨日は, 隠れた名所を見つけた!能動的な旅だ!みたいな気分になってたけどよ」
僕「まぁ, わかんないでしょ, それは…」

友人「あともうひとつ」
僕「なんだよ」
友人「コロッケめっちゃdisってたな…」
僕「それも引っかかるね…」

波浮港に到着

いろいろな疑念を抱きながら我々は波浮港へ.
波浮港は, 川端康成の「伊豆の踊子」の舞台となった名所.
その風情あふれる町並みは, まるでドラマのような, ある意味での「非日常感」に包まれていました.

波浮港の町並み

波浮港の町並み

島京梵天の開店まではまだ時間があるようだったので,
我々は先に, マスターがdisっていた「コロッケ屋さん」を探すことに.
まっすぐに町並みを進むと,一瞬でコロッケ屋さんは見つかりました.

わかりやすすぎる

わかりやすすぎる

店内にはたくさんの芸能人のサインが...有名店なのだろうか.

店内にはたくさんの芸能人のサインが…有名店なのだろうか.

我々はコロッケやメンチカツ等の定番を注文.
その場で揚げたばかりのコロッケをゲットすることに成功しました.

コロッケゲット

コロッケゲット

お店を後にした我々は, せっかくなので風情のある港で海を見ながらコロッケを頂くことに.

友人「マスターのdisりっぷりの割にはさ」
僕「うん」
友人「めっちゃうまそうだよな」
僕「とりあえず食ってみるか…」

揚げたてのコロッケは, 見ただけでサクサク感のわかる衣と,
手にじんわりと伝わるあつあつ感で, どう見てもうまそうにしか見えません.
マスターのdisりっぷりから判断するに, 味が普通なのだろうか…

そんなことを考えながら,我々はコロッケを一口ぱくり.

友人「(モグモグ)」
僕「(モグモグ)」
友人「(モグモグ)」
僕「(モグモグ)」
友人「….」
僕「…」
友人「….」
僕「….」
友人「…めっちゃ美味いっすけど…」
俺「それな…」

一体なんだったんだろう, マスターのあの警告…
めちゃくちゃ美味いコロッケでした.雰囲気も相まって最高.
ということで,波浮港にきたら揚げたてコロッケの鵜飼商店へ!!

港とコロッケ.互いを引き立てる空気感と味.素晴らしかった.

港とコロッケ.互いを引き立てる空気感と味.素晴らしかった.

街ブラのあとに, いよいよ島京梵天へ

そして, 島京梵天のオープンまでの間は, 波浮港を散策.
まるで時代も場所も, すっかりトリップしてしまったかのような町並みでした.

ジブリ映画のような小道

ジブリ映画のような小道

少々高いくらいの場所から見下ろした港町.

少々高いくらいの場所から見下ろした港町.

「波浮の港」の歌碑

「波浮の港」の歌碑

町並みのを堪能していると,あっという間に島京梵天のオープン時間に.
我々はすかさず,たい焼きを楽しむために島京梵天に向かいました.

島京梵天.なんというかこれまた,趣きのある佇まいです.

島京梵天.なんというかこれまた,趣きのある佇まいです.

「伊豆の踊子」

「いらっしゃーーい!!!」

お店を切り盛りしていらっしゃるご夫婦は, 何でも東京から移住をしてきて
この島京梵天を始めたらしい. 元気な「いらっしゃい」の声は,なんとも気分がいいものです.

奥さん「うちは自称, 日本一の羽根付たい焼きの店なんですよ〜」

ということで, オススメの「羽根つきたい焼き」と, 「たこ焼き」を注文.
焼きあがるまで少しだけ時間がかかるというので, 少しだけ待ち時間が出来ました.

この待ち時間, 我々があまりにも衝撃的な事実を知ってしまうことになろうとは…
たい焼きとたこ焼きを大喜びで注文していたあの頃の我々は,
少なくとも,全く想像などしてはいませんでした.

ガイドブックと真実

友人「伊豆大島観光のガイドブック置いてあるぞ」
僕「へぇ」

おもむろに, 店に置かれていたガイドブックに手を伸ばし,
ぱらぱらと中身を眺め始める友人.

ページをめくるその手が突然ピタリと止まったのを, 僕は未だに忘れません.
友人は, 黙って一点を見つめながら,おもむろに口を開きます.

友人「おい」
僕「なんだよ」
友人「これ…(ガイドブックを差し出す)」

友人が僕に差し出したガイドブックには,
月と砂漠ラインの写真やレポートがそれはもう事細かに書かれていました

admin-ajax
それこそ,我々が「ついに見つけた!!」と感動をしながら撮りまくった写真や感想が
プロのカメラマンやルポライターによって,
ガイドブックにそのまま,すべて事細かに書かれていたのです.

我々は愕然としました.そして,他のガイドブックにも同様に,
月と砂漠ラインの写真も,感想も,行き方も…全てが詳細にレポートされていました.

全身の力が抜けて行くのを感じます.
そして.ゲストハウスKOIZUMIのマスターの言葉が
エコーがかかったかのように頭のなかで何度も何度も,反芻されます.

[あのときの回想]
友人「マスター, 3日間お世話になりました」
マスター「どうだった? 楽しかった?」
僕「えぇ,とても. 昨日は月と砂漠ラインってとこにも行ってきましたし」
マスター「あぁ,月と砂漠ラインね.あそこは良いよね

「あぁ,月と砂漠ラインね.あそこは良いよね」

「あぁ,月と砂漠ラインね.あそこは良いよね」

さらに友人は, 続けざまに僕に別のガイドブックを差し出します.

友人「…おい…」
僕「…」
友人「これ…」

そこには,あまりにも衝撃的な写真が,それはもう大きく
載せられていたのです…

IMG_1427 (1)

友人「…」
僕「…」
友人「…」
僕「…」

奥さん「はいお待ちどうさまでーす!!たいやきとたこ焼きでーす!!」
友人「…」
僕「…」

IMG_1017

IMG_1020

友人「俺たち結局, 有名スポットに行って喜んで,人と同じ写真撮って喜んでただけだったのか…」
僕「そう…だな…」
友人「これは…能動的な旅…なんだろうか…」
僕「…」

友人「俺たちは…能動的な旅なんて出来ていなかったんだよ…
結局のところ, 伊豆大島の手の中で踊っていただけだったんだ…

俺「…」
友人「伊豆の踊子…か…」
僕「……」
友人「……」
僕「…うまいこと言わなくてもいいんだよ…」

「日本一の羽根付きたいやき」「たこ焼き」は,
それはそれは暖かく,とても美味なものでした.
まるでそれは,全てを知ってしまった我々にそっと寄り添うような,
とにかく優しく,我々の心にじんわりと染み入る味だったのです.

重なり合った山々や原生林や深い渓谷の秋に見惚れながらも、
私は一つの期待に胸をときめかして道を急いでいるのだった。

そのうちに大粒の雨が私を打ち始めた。
折れ曲がった急な坂道を駈け登った。
ようやく峠の北口の茶屋に辿りついてほっとすると同時に、
私はその入口で立ちすくんでしまった。

― 川端康成『伊豆の踊子』より

【能動的な旅とは,一体何だったのか…? 我々は終わりかけようとしている旅の中であまりにも本質的な問いを抱いてしまう…果たして我々はひとつでも「能動的」と言える出来事を, 見つけていたのだろうか…?次号, いよいよ最終号!! この一大スペクタクルのエピローグに刮目せよ!!】