【連載第5回はこちら!!】

「受動的な旅」

気づけば, 我々は「受動的な旅」にはまり込んでしまっていました..
レンタカーを走らせながら,
本当に自分たちは「能動的」な旅を出来るのか?
ということに思いを馳せます,

レンタカーの中には,少し重い空気が漂い,
会話もイマイチ弾まない中で, とりあえず, 我々がまず目指そうと決めたのは「筆島」でした.

こんな名所「筆島」が,なんとなく目指しやすかった.ここを目指すしかなかった.

こんな名所「筆島」が,なんとなく目指しやすかった.ここを目指すしかなかった.

「筆島」は伊豆大島を代表する観光名所です. しかし, 我々はその
「観光名所」と呼ばれるランドマークを目指すことしか出来なかったのです.

「能動的な旅」をはじめようと決めたのに,
「能動的な旅」を始めることは, 意外と難しかった.
そのジレンマに苛まれ, 車内の空気は重くなって行く一方でした.

俺「筆島って結構有名な名所なんじゃないの」
友人「じゃあ他に何があんだよ」
僕「あぁ…」
友人「もう宿戻るか?」
僕「いや,それは…」
友人「……」

原付の兄ちゃん

我々の前に一台の原付バイクが止まり, ライダーは何かに目を凝らしていました.

友人「行くとこねぇな」
僕「…」
友人「ライダーの兄ちゃんに聞いてみるか」
僕「…」

すっかりテンションがダダ下がりの我々は, 少しでもこのテンションを上げるために
そのライダーに声をかけようなんて冗談を言いながら,
その原付バイクの近くに車を近づけました.
するとその原付バイクは, 我々の気配を察知でもしたかのように
颯爽とその場を去って行きました.

友人「行っちゃったよ」
僕「行っちゃったな」
友人「おい」
僕「ん?」
友人「これ…」

原付ライダーが去ったあとのその場所には...

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友人と僕「月と砂漠ライン…」

月と砂漠ライン

「月と砂漠ライン入口」とだけ書かれた看板の前で無言で立ち尽くす我々は,
お互いに言葉を交わすこともなく,
生い茂る木々の中に静かに迷い込んで行きました.

今思えば, 「月と砂漠ライン入り口」と書かれた看板,
そして, 戻ってこられるのかどうかも分からないような森の入口を見て,
2人は同じようなことを感じていたのでしょう.

そう,「能動的な旅」は, 「ここから始まるに違いない」と.

まるでジブリ映画で見たかのような森を進む我々…
「本当に戻ってこられないのかもしれない」という
一抹の不安をお互いが感じ始めた頃…

友人「行くしかねぇだろ」

その言葉に対する僕の返答など必要ありませんでした.
だって我々の中には,「一歩を踏み出す」という選択肢しか無かったのだから.

果てしない道

「月と砂漠ライン」は, 終わりの見えない森の中を延々と続いて行きます.

そもそも我々は, この「月と砂漠ライン」が一体どこに繋がっているのかを知りません.
森のなかに細く敷かれた道を一歩ずつ先へ進むたびに,
我々の頭の中に入り交じる期待と不安…

10分ほど歩いたあとに開けた視界は, 今まで我々が抱いていた期待や不安が
あまりにも些細に感じられるほどに壮大な景色でした.

延々と広がる裾野

延々と広がる裾野

圧倒的なスケールの前に,小さな我々は立ち尽くすことしかできない.

圧倒的なスケールの前に,小さな我々は立ち尽くすことしかできない.

荒々しい岩山もちっぽけに見えてしまう.

荒々しい岩山もちっぽけに見えてしまう.

さっき登った「三原山」の目の前に広がる広大な砂漠.

さっき登った「三原山」の目の前に広がる広大な砂漠.

友人「おい…」
僕「…」

「月と砂漠ライン」のその先には, 「火山灰の砂漠」があったのです.
視界のすべてを支配するその砂漠は, 動けなくなるほどの圧巻の光景でした.

もく星号

しかし, 突如として広がったその光景に圧倒される我々の目の前には,
さらなる「道」が繋がっているのが見えました.

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「月と砂漠ライン」は, まだ終わりません.

友人「火星ってさ」
僕「おう」
友人「こんな感じなんだろうな…」
僕「…そうかもね」

そんなことを話す我々は, 大自然が創りだした「無」に支配されたパノラマの中に
寂しく立ち尽くす小さな看板に気づきます.

5047

友人「もく星号…」
僕「…」
友人「ここが天国だったら,幸せかもしれないな」
僕「…」
友人「…やっぱ火星ってこんな感じなのかもしれないな」
僕「…」
友人「…」
僕「…木星じゃないんだね,そこは…」

山頂へ

「もく星号遭難の地」の看板に思いを馳せた我々は,
「月と砂漠ライン」の到達点を目指し, 着々と勾配がきつくなる尾根を
1歩ずつ進んで行きます. そして我々は,ついに山頂―
「月と砂漠ラインの最終地点」へたどり着きました.

360度に広がるパノラマの前に立ち尽くすちっぽけな2人.

360度に広がるパノラマの前に立ち尽くすちっぽけな2人.

「人間ってちっぽけな存在だよな...」そんな友人の言葉が, 途方も無い説得力を帯びます.

「人間ってちっぽけな存在だよな…」友人のそんな言葉が, 途方も無い説得力を帯びます.

「能動的な旅」を始めた途端に, 今までの人生で最大の景色に包まれた我々は,何も言わずとも互いの胸の中に心地よい達成感を感じました.

「能動的な旅」を始めた途端に人生最高の景色に包まれた我々.何も言わずとも,互いの胸の中には確かな達成感が溢れました.

友人「人間ってちっぽけだな」
僕「大自然のスケールには勝てないよね」
友人「…」
僕「…」

友人「スターウォーズにこんなのあるよな」
僕「…」
友人「…」

僕「火星は?」
友人「…」
僕「…」
友人「どっちでもいいんだよ…」
僕「…」

「能動的な旅」

「能動的な旅」.
気づけば我々が「テーマ」としてしきりに口にするようになったこの言葉は,
今思い返せば, 単なる酔った勢いで口走ったものに過ぎませんでした.

しかし, 無意識に陥っていた「受動的な旅」を抜けだした2人が
辿り着いた「能動的な旅」のはじまりの一歩のその先に待ち受けていたのは,
圧倒的なスケールで広がる大自然でした.

さらに, この「伊豆大島」という離島は,
我々に 「人間とは, いかにちっぽけな存在なのか」
ということを, 教えてくれたのです.

そして, 我々はこの「月と砂漠ライン」を, あとにしたのです.

【ついに始まった「能動的な旅」!! しかし, 伊豆大島に待ち受けるドラマの数々は留まることを知らない!!次号へ続く!!】